里山管理
1.里山の現状
かつて、里山は人々の暮らしと密接していました。薪、炭の燃料や農地の肥料、資材の供給元として生活に欠かせないものでした。
里山は持続的な利用により、定期的に伐採され、生物多様性が豊かな明るい広葉樹林が維持・管理されていました。
しかし、昭和30年代から始まった燃料革命により、薪、炭は、灯油、ガス、電気にとって替わられ、農業においても肥料革命により化学肥料が普及していきました。人々は里山を利用することがなくなり、放置された広葉樹林が増えていったのです。
2.県内の里山
県内では、住宅街の中の開発緑地、河川沿いの河岸段丘の斜面林、放置された農地の森林化など様々な形態の里山が点在していますが、その多くは利用されずに放置されています。
一方、里山は都市部の生活環境保全や景観保全の意味でも重要な役割を持っています。
3.里山の問題
里山の問題は、これまで行われてきた人による働きかけが縮小したこと(アンダーユース)により、自然環境が劣化していることが大きな原因となっています。
①生物多様性の減少
- 放置された里山ではササ類が優先して、遷移が止まってしまっている場所もあります。
- 大径化した樹木の下で光環境が悪化して、下草のほとんど生えない暗い森林になった場所もあります。
- 大径化したナラ類にナラ枯れの被害が起きています。
詳しくはナラ枯れのページ参照 →ナラ枯れについて(神奈川県森林協会)
②生活環境への影響
- 伸びた樹木は隣接する畑の日照を妨げたりしています。
- 隣接する住宅地に枝を張り出し、枯れ枝が落下したり、枯損・木が倒れたりして被害を起こしたりすることもあります。
- 人目につかない緑地がゴミ捨て場になっている場所もあります。

③竹林の拡大
- 竹の侵入により、元の広葉樹林が失われている場所もあります。
- 竹が隣接する住宅地や農地にまで侵入している場所もあります。
詳しくは竹林整備ページ参照 →竹林整備(神奈川県森林協会)
④鳥獣問題
- ヤブ化した里山はイノシシなどの野生鳥獣の棲み処になっている場所もあります。
4.里山の課題
①管理方法
消極的管理
積極的管理
里山をどうやって管理していけばいいのでしょうか。
ア 景観としての役割のみ。そのまま放置する。
イ 最低限の防災対策だけの管理。
ウ 市民が楽しむための公園緑地等として管理。
エ 森林サービス産業として空間を活用。
オ 生産林としての管理。
②担い手
放置された里山には所有者がいますが、経費や労力もかかるので、管理を行えないばしょもあります。所有者が不在であることもあります。
所有者が管理を行えない場合、代わりの担い手として、ボランティア団体や企業なども考えられます。
③林産物
里山では、かつて燃料用の木材や農業用資材等が利用されてきたが、現在はほとんど利用されていません。
木材として利用できる広葉樹も存在しますがサプライチェーンが構築されていないので、活用されていないのが現状です。
花や実、枝物など価値のある物もありますが、活用されていません。
④財源
管理するためには資金が必要です。
行政が整備する土地について買取りや借地などして、新たに予算を手当てして管理する例もあります。
企業が資金を出したり、賃借で管理する場合などもあります。
5.いろいろな取組
①-1 管理(団体による)
- 横浜市
地域の残された緑地を「市民の森」として管理してます。地域の住民を中心とした団体(愛護会)が設立され、市の支援を受けながら、それぞれの市民の森を管理しています。
→市民の森 横浜市
- 秦野市
放置竹林について所有者とボランティア団体と市で協定を結び、ボランティア団体が整備しています。団体には市から補助金を交付しています。
①-2 管理(森林空間利用)
里山の森林空間を活用して人を入れ込むいろいろな取組があります。
②担い手の育成
- 大磯町
町は町民を対象とする技術習得のための講習会、研修会などを開催し、担い手を育成しています。町が担い手と所有者をつなぎ、整備する場所を確保し担い手は整備で出た材を薪などに加工して販売し活動資金を得ています。
- 中井町
放置竹林の整備のため、講演会や講習会を開催し担い手の育成を計画しています。
- 秦野市(再掲)
ボランティア団体に補助金を交付するほか、研修などを行っています。
→里山ボランティア養成研修 | 秦野市役所
- 鎌倉市
公園や緑地を整備する「緑のレンジャー」を登録し、講習会などで技術の普及を図っています。
→鎌倉市/鎌倉市緑のレンジャーの活動について
③生産物の利用
- Webを利用して販売
広葉樹をWeb上に登録し、買いたい業者がWeb上で検索して買取り、伐倒搬出を行い家具など材料として利用する取組があります。
- 里山で採れる材料
里山にある豊かな資源を活用して、新たな収入を得ながら管理を行っている例もあります。例えば、キノコ類の生産、花材、枝物などの生産により、里山管理をしながら収入を得る取組です。
④財源
森林環境譲与税の活用
- 藤沢市、大和市、茅ヶ崎市など
市町村が管理する緑地などにおいて、森林環境譲与税を充当して整備等をしている例があります。周辺の住宅や道路などに対する被害や人的な被害が起きないように、枝落としや枯損木の処理を行っています。
- 相模原市、鎌倉市、葉山町など
個人所有の緑地について、個人が行う管理に補助金を交付する例もみられます。
5.いろいろな取組
⑤その他
⑥苗木
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